マクロ経済スライド

2019年11月

何故か、今に、「100年安心」が議論となり話題となる年金制度です。
公年金制度の崩壊など、様々な情報が、様々な場所や手段で飛び交っているのを、たまに見ます。
となると、我が国が、これを理由に、破綻の道を進んでいるのでしょうか。

我が国の公的年金制度は歴史があり、ここでは現在の2階建て1階年金と呼ばれる、基礎年金について

そもそも公年金制度は、加入者および世帯の、生活資金の全てを賄う制度ではないはずです。
公年金は、定年後など、老齢期に掛る衣食住、生活資金の頼れる所得保障給付ではあるとは思います。
生活資金の全てを賄う想定をされていないのは、我が国の年金制度ができた当時と同じ。国の保険制度となる老齢年金は、受給権発生を要件に給付が行われる、終身にかけて保障される年金となります。

受給権発生後の老齢基礎年金給付額は、現役世代の加入者本人が納付する保険料を財源とし、保険料納付済の期間に応じた、40年間の加入設計を基本とした、公費をも投じ、法律で算出された年金額となります。
基礎年金は福祉的役割をも持たせ、障害や遺族に対応した保険事故にも同時加入者扱いとなります。

平成16年、マクロ経済スライドが制度化されました。
年金財政の長期的均衡を考慮し、調整期間において、少子高齢化状態においては、額を抑制していきます。

もし、年金受給世代への給付額を固定化すると、今の高齢化社会では年金受給権者が増加しているため、年金給付に必要な費用が膨れ上がります。
増加する年金給付費用に、財政収支対応するには、現役世代から相応する保険料を徴収しないと年金財源が確保できず、現役世代が負担する保険料が過大なものになります。
逆に、現役世代の保険料水準の上昇を抑える考えだと、少子化に応じた財源の中で、増加が見込まれる高齢世代で分ける事となり、年金受給権者の一人あたり給付額が低額な給付となります。

我が世帯で、例えば、自分の親に年金額相当の援助を長期的に行うとなれば、非常に大きな負担に想像し予想できます。そもそも世帯で必要となる生活資金の一部を、国が管掌する保険で、国を単位で扶養性を持たせています。我が国の社会保険制度は、世代間扶養という考え方が一つの基本設計にあります。
年金制度も、次世代(子の世代や孫の世代)へも継続させる制度が必要となります。

今の、マクロ経済スライドは年金額の抑制の仕組みでもありますが、少子高齢化が加速進行する中、現役世代の負担を抑えながら、保険料収入の中で年金額を確保するためには非常に重要な役割があるもの。
平成16年当時に、今までの年金額スライド制、物価や賃金等への変動に対応しながら、少子高齢化というマイナス要因を含ませ、年金財政を長期的な運用に改革しました。

現在の年金制度は、おおむね100年先の年金財政について見通しを行います。
次世代へ送る持続可能な制度のため100年間の財政均衡を図り、年金積立金の運用を検討ながら、年金給付水準を一定維持し、保険料負担を一定水準まで抑制させていきます。
技術的には、年金給付水準の下限値で歯止め、保険料水準固定方式で保険料上昇を抑えます。
年金給付額は、所得代替率50%水準を超える保障を目指すとされます。男子現役世代の収入額(平均)の半分程度を、夫婦で受け取れる年金額(国民年金+厚生年金)を保障し、財政均衡を図ります。
また、この仕組みは、周期的な財政検証が行われ、保険料や国庫負担、給付費用などについて、見通しが作成され、公開されています。

ちなみに、財政均衡を考える上での100年とは、財政検証が行われる地点での、生まれる子をも含めて見た、100年先への均衡方式を検討する趣旨。財政検証は5年に1度行われることになっています。

少子化・高齢化、現役世代の減少など、年金の支給額や支給開始年齢など、マイナス改定への情報が先行しがちですが、物価や賃金の上昇時には年金額を引き上げるルールは従来通り。

平均寿命も延び続ける今、厚生労働省の資料(2019年)では、男性81.25歳、女性87.32歳(2018年調査)のようです。1960年と2018年を比べると、男性で15.93歳、女性で17.13歳の、平均寿命の伸びが資料より確認できます。その頃は、1961(昭和36)年が、国民皆年金・皆保険への改革の年。
年金制度に止まらず、医療保険制度も含めた修正が続きそうです。

自分を大事にすれば長生きする生涯現役の時代へ。複雑な感情ながら、歩くしか無い気がしています。

 

厚生労働省 : 平成26年 財政検証結果
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf

 

シマムラ社労士事務所 嶋村徹